【葉隠】一言の重み

武士は当座の一言が大事なり。
ただ一言にて武勇顕るるなり。
治世に勇を顕はすは詞(ことば)なり。
乱世にも一言にて剛臆見ゆると見えたり。
この一言が心の花なり。

葉隠より

武士たる者はその場での一言が大切である。ただ一言で自分の武勇が顕れる。治世に武勇を顕わすのは言葉である。乱世にあってもその場の一言で剛の者か臆病者かは解る。その場の一言こそが心の花と言うものである。

目次

受け止める力

武士は寡黙であることを大切にしました。

「沈黙は金なり」とか「口は災いの元」などという言葉があるように、思わぬ失言で命のやり取りに発展するようなことは避けたいものです。

それだけではなく、たった一言で自分の武勇が示されるとなれば、一言の重みを感じ、自ずと寡黙にもなるでしょう。

今は言葉が溢れている時代です。

心の中に思っていることは「言わなきゃ分からない!」という時代です。

伝える方法も様々にあります。

面と向かって伝える、電話、メール、手紙等々、様々な手段で自分の思いを伝えることができます。

ただ、言葉が溢れ、伝える方法が多様になるにつれて、余計に伝わらなくなっているように感じることもあります。

メールだからダメとか、伝える方法の良し悪しを議論する人もいますが、そこだけでもないように感じます。

自分の本音を中々表に出さない日本人は、「察する」とか「慮(おもんばか)る」ということを大切にしてきました。

相手の気持ちや状況を「思いやる気持ち」といってもいいのかもしれません。

言葉が溢れるにつれ、そういう「力」が失われてきているように感じます。

コミュニケーション能力という話になると「伝え方」とか「伝える力」という話は出てきますが、「聴く力」とか「受け止める力」の話にはあまり出会いません。

コミュニケーションは一方通行では成り立ちません。

「伝える方法」も大切ですが、日本人ならではの「受け止める方法」も大切にしたいものです。

「言わなくても分かる」

こういう気持ちになれたとき、人は細かな一言に目くじらをたてたり翻弄されたりせず、多くのことを寛容に受け止められるようになるのではないでしょうか。

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