そのままの自分で良い
晴れてよし曇りてもよし富士の山
山岡鉄舟
もとの姿は変わらざりけり
せっかく富士山を眺めるのなら晴れの日が良いよね!
雲がかかってるとよく見えないから残念な気持ちになる!
ついついそう思ってしまいます。
でも、曇っているからといって、富士山の形が変わったりなくなったりしたわけでじゃなく、雲の向こうにある富士山はいつも変わらず雄大にそびえ立っています。
状況が変わってしまうことによって、見てる側の評価や気持ちが変わる事はあっても、そのものの本質が変わることはありません。
どんな状況になったとしても、美しいものは美しく、素晴らしいものは素晴らしい。
そんな思いが込められた歌です。
自分自身に当てはめても同じではないでしょうか?
うまくいく時もあれば、そうでない時もあります。
良い時には近づいてきた人が、悪い時には去っていく・・・
そんなこともあるかもしれません。
時には、いわれのない勝手な評価を受けてしまう事もあったりします。
でも、自分は自分です。
そのままで良いのです。
周りで見ている人達が、勝手に騒ぐことがあったとしても、それによって自分自身の本質が変わるわけではありません。
どんな時でも富士山のように、悠然と、雄大に構えていればいいのです。
うまくいかない時こそ
もちろん他の誰かではなく、自分で自分への評価が変わってしまう事もありますよね。
こんなはずじゃなかった…!
なぜあんなことしてしまったんだろう?
考えが甘かった…
時には自分を否定してしまいたくなることもあります。
それでも、自分は自分です。
突然ダメになったなんてことはあり得ないですし、元々能力がなかったとか、そういうことでもありません。
うまくいかないということは、ただ慣れてなかったとか、たまたまの偶然の重なりとか、そんな程度のことです。
人生も、人の心も、晴ればかりではありません。
曇ったり、雨が降ったりというタイミングもまた巡ってきてしまうものです。
そんな、自分を否定したくなったり、ネガティブな感情が出てきた時こそ、自分自身をしっかりと受け入れてあげてください。
うまくいかない時にやるべきことは、自分にダメ出しをすることではなく、むしろ自分をいたわってあげることです。
成長を目指すために
自分を、もっと良くしたい!成長させたい!と思うことは素晴らしい事です。
ただ、まだまだ至らないから、何かが足りないから・・・と、不足ばかりに目が行ってしまっていませんか?
足りないと思えるからこそ向上できるわけですが、そんな時こそ、足りている自分をしっかりと自覚できていることが大切です。
短所の克服を目指す事は悪い事ではありませんが、短所がゼロになることはあり得ません。
不足を追い求める事は、終わらない挑戦を始めるようなものです。
せっかく大切な時間や労力を使うのであれば、むしろ長所を伸ばし続けることを目指すほうが前向きな選択ではないでしょうか。
今のまま、そのままの自分で十分なんだ。
そんな自分をもっともっと成長させていきたい!
自己肯定感、自己重要感という大前提があってこそ、本当の成長へと繋がっていくのだと思います。
たった一つ
今の自分をそのままで良いなんて、とても思えない…
謙虚さを美徳とする日本人としては、そう思ってしまう人も多いのではないでしょうか?
「富士」は「不二」とも表記します。
「二つにできない」つまり「二つとない存在」、「一番」という意味です。
あなたという存在は、この世にたった一つだけ。
それがどれだけ貴重なことか分かりますか?
あなたはただそこに「居る」のではありません。
間違いなくはっきりとここに「存在」しているのです。
何を成したか?といういことが気になりますか?
もう既に頑張って生きているじゃないですか。
どうか今ここに「在る」自分という存在を認めてあげてください。
今ここに「在る」ということこそが既に尊いのです。
そしてこれからも、そのままのあなたでいてください。
何かを「成す」としたなら、それからで遅くないはずです。
山岡鉄舟について
山岡鉄舟とは・・・
幕末から明治時代の幕臣、政治家、思想家。剣・禅・書の達人としても知られる。
Wikipedia
今回取り上げた歌は、鉄舟が宮中に勤めていた頃に読んだものと言われています。
徳川家の幕臣として江戸城無血開城に大いに貢献した鉄舟ですが、その後、西郷隆盛のたっての依頼を受けて、かつての敵方とも言える明治天皇に仕えることになります。
そこから「忠義の人だと思っていたのに」というような、良からぬ陰口を叩かれることもあったようです。
さすがの禅の達人も、いわれのない誹謗中傷にはモヤモヤするところがあったのかもしれませんが、そういった思いを吹き飛ばすかのような歌を詠んでしまうあたりに、人間の大きさが見えるような気がします。
以下のような人物像に興味を持たれた方は、Wikipediaだけでなく、「山岡鉄舟」と是非ググってみてください。
日本人が誇れる最後の武士の一人だと思います。
- 幕末の三舟の一人(勝海舟、高橋泥舟)
- 勝海舟よりも前に西郷隆盛と面会し、江戸城無血開城へのお膳立てをした。
- かつての敵方西郷隆盛から「命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、始末に困るものなり。この始末に困る人ならでは、艱難(かんなん)を共にして国家の大業は成し得られぬなり。」という評価を受ける。
- 剣の達人で無刀流の開祖だが、生涯一人も切ってはいない。
- あんぱんの「木村屋」の看板を書いた書の達人でもある。
- 最期は禅の達人らしく、座禅の姿勢のまま息を引き取った。