サムライ文化から生まれた言葉
前回「刀に由来する言葉」を紹介しましたが、刀以外にもサムライ文化の影響から生まれた言葉があります。
「弓矢」に由来する言葉
「刀は武士の命」ならば「弓馬術は武士のたしなみ」でした。
刀同様にたくさんの言葉が今も使われています。
的を射る
弓矢を的に命中させる意味から。
物事の要点を的確に掴んでいること
的確
弓矢を正確に的に当てられる力の意味から。
間違いのない確かなこと
的中
弓矢が的に命中した状態から。
予想などが当たったこと
的外れ
文字通り、弓矢が的を外した状態から。
要点や狙いが外れていること
目的
目で的を狙う意味から。
今の時代になっても全く意味が変わらず、目的のこと
図星
「図星」とは矢を射る的の中心にある黒い点のことで、矢を射るときはここを狙うことから、狙いや急所のような意味になったことから。
思惑や指摘されたことなどが的中すること
手の内を明かす
「手の内」とは弓道における手の使い方のこと。
手の使い方や手のひらにできたマメなどを見れば、その力量が測れたことから。
自分の計画や力量など、重要なことを明かすこと
筈(はず)
「筈」とは、本来弓の両端にある弦をかける所や、矢の端にある弦を引っかけるくぼみの部分のこと。
この「筈」と「弦」がぴたりとはまって当然という意味から。
そんな筈はない!などの使われ方に
手ぐすねをひく
「手ぐすね」とは「手薬煉」と書き、弓の弦に滑らないように塗った粘着剤のこと。
合戦前にはこれを塗って準備をしたことから。
万全の準備で待ち構えていること
矢継ぎ早
矢を放ってはすぐに次の矢をつがえる動作の素早さから。
物事を次々と続けてこなしていくこと
矢面に立つ
敵の矢の前面に立つことから。
相手の攻撃を真正面から受ける立場に立つこと
満を持す
弓を目一杯引きしぼった状態から。
十分な準備をして待っている状態のこと
「腹」に由来する言葉
「刀」とは違って、サムライの価値観が影響してるかどうかは定かではありませんが、日本語には「腹」を「心」のような意味合いで使う言葉があります。
それは「人間の魂は腹に宿る」と信じられてきた事が強く影響していると思われますが、「サムライと腹」と考えると「切腹」が連想される人も少なくないのではないでしょうか?
「切腹とは魂の宿る腹を自ら切り開いて穢れていないかどうかを証明するための儀式」であり、単なる自殺とは違い、サムライだけに許された「名誉ある死」と考えられてきました。
「人間の魂は腹に宿る」という考え方自体は、日本だけでなく世界中で共通だったようですが、「切腹」という文化を知る日本人にとっての「腹」は、特別なものだったのかもしれません。
ここで紹介する言葉は、現代でも何の疑問もなく当たり前に使っている言葉ばかりですが、「腹=魂の在処」と思いながら見返してみると、また違った興味が湧いてくるかもしれません。
腹黒い
心の中に何かたくらんでいる・陰謀を持っている
腹いせ
晴れない気持ちを他で紛らわせること・八つ当たり
自腹を切る
会社などの公金や共同で出すようなお金を、あえて自分で負担する・身銭を切る
腹が立つ
怒りを感じる・しゃくにさわる
腹に据えかねる
頭にきて我慢ができないこと
腹がよじれる
おかしすぎて大笑いすること
腹を括る・腹を据える
覚悟を決めること
腹がすわる
度胸があること
腹を探る・腹を読む
相手の心の中、本心を探ろうとする。
腹を割る
本心を打ち明ける・隠し事をしない
「首」に由来する言葉
もう一つ興味深いのが「首」に関わる言葉です。
サムライにとっての「首」とは、勝敗や生死を分ける象徴的な存在でした。
その場合の「首」とは、首根っこの部分だけではなく、首から頭のてっぺんまでの「頭部」を差しています。
今では、命を失うかどうかではなく、役職や立場などの今ある環境をを失うかどうか?という意味合いの言葉が残っています。
首がつながる
会社や役職などを辞めさせられずにすむ
首の皮一枚
ぎりぎりまだつながっていること・少しの可能性が残っていること。
首になる・首を切る・首が飛ぶ
辞めさせられること
首を挿げ替える
役職者等、上の立場にいる人を交代させること
首が回らない
借金などでやりくりがつかなくなること
首を括る
紐などで首を絞める意味合いから、自殺行為のこと
まとめ
いかがだったでしょうか?
「刀」にまつわる言葉よりも更に身近な言葉が多いように感じます。
サムライの文化は私達の生活にしっかりと根差し、今も日本人の文化の一部となっています。
ルーツを知る事は、私達自身を知ることにも繋がります。
今はネットで検索するだけで、大抵の事は調べられますから、ふと気になった言葉があれば検索してみるのも楽しいですよ。